後戻りできない五つの地球の変化「転換点近い」 英大など報告書

気候変動を考える

市野塊
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 英エクセター大などのチームは6日、深刻化する温暖化によって、人類や地球にとって後戻りできない変化を起こす「ティッピングポイント(転換点)」に、まもなく到達するおそれがあるとの報告書を発表した。筆者のティム・レントン教授は朝日新聞のインタビューに「転換点に達することは社会の崩壊を意味する」とし、早急な対策を促した。

 中東ドバイで開催されている国連の気候変動会議(COP28)で発表された。

 緩やかに見えた温暖化の影響は転換点に達すると、突然激化し、後戻りできない変化を引き起こすと言われる。リスクがあるのは、グリーンランドと西南極の氷床、永久凍土の融解、熱帯のサンゴ礁の死滅、海洋の流れである大西洋南北熱塩循環(AMOC)の停止の五つ。時期は明示していないが、複数の現象がドミノ倒しのように連鎖するおそれもある。産業革命前からの気温上昇が1・5度を超えれば、他の転換点も加わる。

 すでに溶け始めているグリーンランドや西南極の氷が大規模に崩壊すれば、数メートルの海面上昇が起こりうる。大西洋を南北方向に流れるAMOCの停止は、欧州の寒冷化のほか、降雨パターンや食料生産にも影響を及ぼす。

 レントン氏は、異常な暑さを記録した今年は「一時的に転換点を超えたように見える。転換点が近づいているシグナルかもしれない」と話した。所得格差をめぐって争いも生むという。「過去に崩壊した全ての文明で起きたような根本的リスクだ」と話した

 一方、改善に向かうための転換点にも近づいているという。電気自動車(EV)や再生可能エネルギーなどの技術革新だ。例えば、EVが普及すれば、蓄電池のコストが削減され、再エネの貯蔵もしやすくなる。

 その上で、世界の化石燃料を2050年までに段階的に廃止することを提案。影響を強く受ける脆弱(ぜいじゃく)な国で、世界的な不平等が生じないよう、変化に適応し、被害を救済するための仕組みをさらに強化すべきだとした。(市野塊)

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